そのコミュニケーション、その子にとって本当に必要?
私たちは、どうしても周りと比較してコミュニケーションが取れていないと感じると、コミュニケーションを改善していきたいと考えてしまいます。
これは間違った感覚ではありません。
例えば自閉系の発達を抱えた方が生活していくと考えた時、社会適応、行動技能、社会技能などの「社会性」の困難さがあると思い、おのずとその部分をサポートしていきたいと考えるようになってしまうのです。
なぜかというと、実は私たちも「社会性」に対して少なからず困難さを感じているため、その方も当然この部分が困っているのだろうと推測してしまうのですね。
しかし、自閉系の成人の方が実際に困っていることをあげてもらうと以下のようになります。
●アレルギー
●意図しない体の動き(※1)
●胃腸の不調(※2)
●感覚に対する過敏
このように「身体機能」に対しての悩みが多いそうです。
私たちが困っているだろうと思っていることと、本人が実際に困っていることには、こんなにも違いがあって驚きです。
もちろん全ての方に当てはまるわけではなく、実際にコミュニケーションが取れずに苦労している方もたくさんいらっしゃいます。
コミュニケーションに限らず、多数派と少数派に分かれると、圧倒的に多数派の意見の方が採用されやすい世の中です。
少数派になりやすいお子様は、多数派の感覚としては吸収しやすい言語面、多数派の基準から見た感覚や視点のとらえ方に対して、「なんだかピンとこない…」という感覚になるそうです。
これは理解できていないのではなく、理解の仕方がお互いに違っていることからくるズレなのだと思います。
コミュニケーションは人と人との間に起きていることなので、どちらか一方が悪いわけではありません。
苦手さを抱えるお子様にとってのコミュニケーションは、「改善」するものではなく、内側にある「その子の視点に立ったコミュニケーション」を大切にしながら、私たちはサポートしてまいります。
※1 目に見えない体の知覚が分かりにくい(こたつに足を入れて自分の足が見えなくなったときに、自分の足がどうなっているか分かりにくい、背中の感覚が分かりにくいなど)
※2 セロトニンという安心、落ち着きなどの感覚を司る物質の分泌が少ないと言われており、セロトニンは脳ではなく、約98%は体内環境を整えるためにあるため、胃腸の不調につながりやすいとされている。
<担当:伊藤>
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